出光興産(5019)の合併・公募増資について法律的に考えよう① 合併手続き

出光興産(5019)と昭和シェル(5002)の経営統合に向けた協議が

ずーっと続いているわけですが、

出光の創業者の反対によりなかなか進展しません。

シェルとしても出光の経営者としても

創業家に納得してもらった上で統合したいというところだったわけですが

さすがにもう時間をかけられないという判断です。

 

さて、どうして経営統合が進展しないかという点に対する法律的な答えは

出光の創業者一族が出光の株式を33.92%を保有してるから

ということになります。

 

これがなぜ問題なのかということですね。

これは、合併について吸収合併するのか新設合併なのか

もしくは分割して持株会社化するなど他の方法なのか不明ですが、

吸収合併する例で考えてみましょう。

(どの方法でも同じ壁にぶち当たりますので)

昭和シェル側が存続会社で出光を吸収する場合、

会社法783条で「消滅株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない」と定められています。

この株主総会は会社法309条2項12号で

特別決議による決議が必要だとされています。

特別決議とは、出席株主の議決権の2/3以上が賛成しなければならない決議です。

創業家一族が3/1以上を保有していますので

この吸収合併契約の承認決議は可決されません。

また、逆に出光が昭和シェルを吸収する場合でも

会社法795条で「存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない」と定められており、

この株主総会は「特別決議」と定められていますので(会社法309条2項12号)

この場合も可決されません。

ということで、合併を行うには

創業者に納得してもらうか

無理やり進めるのであれば、

創業者一族の持株比率を引き下げることが必要になります。

ということで、今回出光が公募増資を行い、

創業者一族の持株比率の引き下げに踏み切ったわけですね。

 

そして、公募増資の差し止め請求については次の記事で。